東京地方裁判所 昭和40年(ワ)9225号 判決
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〔判決理由〕<証拠>によれば、本件出火にいたるまでの状況はつぎのとおりであることが認められる。すなわち、被告会社の従業員訴外清水保晴は、右出火の前夜の九時三〇分頃来店の客の注文により、被告店舗調理台の下に置いてあつたトースターを使用したが、その使用を終つた後も電源を切らず、通電したままにしておいた。そして、同日午後一〇時近くに閉店したが、その際右トースターの状況を点検せずに帰宅してまつたので、長時間通電放熱による過熱のため、トースターの上方にある棚板に着火し、順次調台の板張りなどに燃え移つて拡大し、火災となつたものであることが認められる。
ところで電熱器具の過熱が出火の原因になることは、必ずしも稀有の事例ではないから、営業として常時これを使用する者は、その取扱について細心の注意を払うことを要するのは勿論であつて、その注意義務の内容には、右器具の使用を終つた場合には、確実に電源を切り、長時間通電による過熱を防止するように注意すべき義務も含まれているものというべきである。
前記甲第一号証によれば、本件火災発生当時、被告方には、業務用としてトースター三台を備えていたが、それは調理台の下に設けられた二段の下段に並べて置かれていたこと、トースターの上部と、その上方の棚板との間隔は約七糎であつたことが認められるが、<証拠>によれば被告方では来店の客の注文に応じ、しばしば右三台の一部又は全部を使用していたことが認められるから、トースター上方の棚板は、常に乾燥状態にあつたものと推認することができる。かような状況の下において、業務用にトースターを使用する者は、その取扱について特に慎重を期し、いやしくも過熱による発火などの事態を惹き起さないような注意をなすべき義務があるのは当然である。ところが、被告会社の従業員である訴外清水保晴は、右出火の前夜一〇時頃閉店に際し、さきに自己が使用した右トースターの電源を切ることを怠り、その点検確認さえもせず、通電状態にしたまま帰宅したことは前認定のとおりであるから、同訴外人の過失の程度は相当に重大であり、法にいわゆる重過失に該るものと認めるのを相当とする。(下関忠義)